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　下関署では死体の検分を行った。死んだのは四十代後半の男性だった。司法解剖も行った。
司法解剖の結果、大量のアルコールが検出された。体のあちこちに小さな傷はあったが、直接の死因は溺死だった。酔っ払ったあげく、海に落ちて水死したのか。
　死者の着ていた服のポケットには財布だけがあった。携帯電話も見当たらなかった。
海底を探っても何もない。
　男の身元を示すような遺留品はなにもないのだ。

下関署では前夜の男の行動を探った。近所の防犯カメラを追った。近くの居酒屋やホテルなども隈なく調べるのだった。
　近くのホテルには宿泊した形跡はなかった。ただ、一軒のビジネスホテルに電話で小杉という名で予約が入っていたようだ。少し遅くなってから来るよと言って。
ホテルのフロントは会ったこともない、知らないという話だった。
　果たしてこの男性が死んだ男なのか？

さらに聞き込みを続けると、男は、近くの居酒屋で飲んでいたことが分かった。
ふぐが食べたいので東京から来たんだ。今日がフグの解禁日と知って東京から来たらしい。
一人客だったようだ。近くの唐戸市場で競りの様子を熱心に見て、さあ、美味しいフグを食べようと店に来たらしい。
うまい、うまいと楽しく飲んでいたようだった。