＊

　玉藻公園での事件から一か月ほどして、沢田女史は退職した。表向きは一身上の都合ということだったが、実際は社長が仕向けたのだった。
このところ、森田社長は沢口に冷たく当たるようになっていたのた。そして、芸能プロ・Ｇに何かと用事を見つけて、打ち合わせを口実に連絡をとった。
　用事があるときは必ず沢口を送るのだった。そこで相手をするのはいつも近藤だった。近藤は沢口にぞっこんになってしまっていたのだ。
　最初はうとましく思っていた沢口だったが、近藤に対してだんだんと好意を抱くようになってしまった。
　社長は最近冷たくなって、会ってくれないし、寂しい気持ちになったのだ。そして近藤とも付き合うようになったのだった。

「社長、最近わたしに冷たいですね。わたし、なんかしたかしら。このままでは会社におれないわ」
「いや、そういうわけじゃないがね。いや、君がやめたいのなら何も言わない。今まで会社にも、僕にも十分尽くしてくれたんだ。たっぷりと退職金は弾むよ」

　そして、沢口はイベント会社・アース企画を退職したのだった。それから近藤と本気で付き合うようになったのだった。
　まったく女心はよくわからないね。
　森田社長としては、自分の計画がうまくいくようになって満足だった。でも、とにかく、自分に困ることをした二人を何とかしないといけないんだ。
　予定通り、奥田を自殺事件として処分した社長だったが、まだ二人、残っていた。
　沢口と近藤だ。この二人をどうしよう。思案する森田社長だった。