エピローグ

　事件の決着後、数日してから堀越警部から電話があった。
「朝見さん、事件が片付きました。ほんとうに、ありがとうございます。本来ならこちらからお礼に参上したいところですが、ご迷惑になるでしょうから、一度、署へおいでくださいませんか。明日の午後一番で」
「わかりました。伺います」
　翌日、池袋署へ行った朝見を、堀越警部が満面の笑みで迎えた。
「どうぞ、こちらへ」
　案内された応接室には、長谷川部長刑事、韮崎署の高山部長刑事がいた。
「朝見さんとのおつきあいで、派手なことはお嫌いでしょうから、少人数で、現場の人間だけで、お礼を申し上げます。お陰で、池袋の事件も韮崎の事件も片付きました。ありがとうございます。警視庁が表に出ましたが、裏で朝見さんが動いたことは承知しています。ありがとうございました」
　立ちあがって、頭を下げる三人の刑事だった。
　戸惑う朝見だった。
「いや、僕は特に何にもしてませんよ」
「ご謙遜を。ところで、鯖街道の女って、誰なのでしょう。朝見さん、知ってるんじゃありませんか？」
「いや、まあ、それだけはご勘弁をねがいます」
　

　事件がすっかり片付いてほっとした朝見だった。
　ああ、江藤女史はどうしてるんだろう。長浜へ戻って幸せになっているだろうか。
　彼女の幸せを祈る朝見だった。
　そして、自分自身の行く末は？
　いろいろと考えさせられる朝見だった。
　いつまでもこんなことをしていていいんだろうか？

鯖街道の女　完

悪丸君

あとがき

　悪丸君、作家デビューの二作目だ。どういう内容にしようかと考えていた時、ふと、この前、自分の実家に帰省したとき食べた鯖の刺身が脳裡に浮かんだ。そうだ、鯖だ。鯖街道だ。鯖街道で行こう。
　鯖街道に謎の女を出没させよう。後、事件の舞台は一度うろうろしたことのある池袋、甲府の武田信玄、韮崎の武田勝頼としよう。
　女の正体はどうする？　最初はどこから始めるか？　いろいろ考えて、どうにかまとまった。

　小説を執筆するのは本当に大変だ。読み返せばつじつまの合わないことばかり、肉付けしようにもネタはないし。本当に大変だ。世の中の小説家ってすごい人たちだね。
　この作品の出来栄えはどうかよくわからないが、読んでくれればうれしい限りです。

　次回作は「因幡の白兎」とするつもりです。