夕陽に輝く琵琶湖と長浜城はきれいだ。
一度この辺りもルポしたいもんだね。
「江藤さん、さあ、着きましたよ。長浜城です」
「ありがとう、朝見さん。助かりました。ここで私は母を待ってます」
「さきほど聞いたあなたの苦悩のことはよくわかりました。確かに本多さんの事件は少し変ですね。僕は、東京へ戻ったら、池袋署へ事情を聴きに行きます。でも、本多さんから貰ったネックレスが気になりますね。なんか秘密があるのかも。一度、じっくり調べたほうがいいですね。でも、その前に足の捻挫を直してください。また、連絡します」

　そして江藤と別れたのであった。

　長浜からは北陸道、名神を通って京都東ＩＣで降りる。一時間二十分ほどだ。山科駅前のホテルで一泊した。ここなら鯖街道終点の出町柳は近い。
　翌朝早く、朝見はホテルのフロントの勧めで、山科疏水を散策した。琵琶湖から京都・蹴上まで通じる水路だ。明治期の傑作建造物だね。
いやあ、いいね。疏水の流れは最高だね。きれいな水が静かに流れている。琵琶湖からの水なんだ。昔は舟暈が盛大だったみたいだが、今は、京都市の水道のほとんどをこの水が賄っているのだ。もっとも水道用は第二トンネルらしい。
朝早いのにもかかわらず散歩して入り人が結構いる。桜の木がたくさんあるよ。春はすごいんだろうな。秋の紅葉の時期もすごいに違いない。今はシーズン中の土日には琵琶湖から蹴上まで観光遊覧船が走っているのだ。船から見る気色も素晴らしいに違いない。一度乗ってみたいなあ。

　しかし、朝見の頭の中は、江藤のことでいっぱいだった。鯖街道はどっかへ行ってしまったみたいだった。