それから、この前、長浜に引っ越すために、部屋を整理していて、彼から貰ったネックレスをどうしようかと弄んでたら、ネックレスに付いてるペンダントがぱっくりと割れて、中からマイクロＳＤカードが出てきたんです。きっとこれが本多さんの言っていた大事なものだと思います。それがこれなんです。これを朝見さんに預けます。私は中を見ていません。どうか、よろしく扱ってください」
　そうか、これがキイなんだ。

「わかりました。私が預かって善処します。あなたの名前は決して公にはしません」
「よろしく。私がお願いしたかったこと、言いたかったことはこれだけです。ありがとうございます。おせわになりました」
　そうして江藤女史は立ち去ってしまった。

　あまりにも変わり身の早い、江藤女史に唖然とする朝見だった。

　帰ってさっそく、パソコンでＳＤカードを調べた。驚くなかれ、Ｎ物産の大下社長の会社資産の私物化の詳細が載っていた。彼、本多もこの悪事に一役買っていたらしい。
　社長室長の桜井が、社長の次に私腹を肥やしていたのだ。韮崎で死んだ市川の名前もある。
　彼は週末の二日間手伝っていたらしい。全員が結構な金額を受け取っていた。
　そして、最後に本多のメモがあった。

　――この際、社長へ、進言しよう。こんな悪事は全社員の不幸を招くようなものだ。自分にどのくらいの影響力があるかわからないが、こんなことはもうやめてもらいたい、と。――