第五章　朝見、動きだす

　夜遅く、九時過ぎて、やっと東京に戻った朝見だった。
　しば漬けのお土産を持って。
　翌朝、いつものように遅く起きた朝見を母親が珍しく待っていて朝見をほめた。
「あのしば漬け、美味しかったわね。充彦も少しはセンスがあるのね」　まあ、少し点数を挙げた朝見だった。

　それから数日、鯖街道のルポ執筆に没頭した朝見だった。
　やっとできたルポを持って日本紀行編集部へ向かった。
「やあ、朝見ちゃん、ご苦労様。送ってくれたあのしば漬け美味しかったよ。さすが本場だね。どうだい、ルポの出来は？」
「やっとできました。どうぞ、読んでください。まあ、よく仕上がったと思いますよ」
「そうか」
　ぺらぺらと原稿をめくった黒川は
「お、いいじゃない、そうか、鯖街道って、こんなとこだったんだ。やっぱり、鯖が主人公なんだな。今度は本場の鯖寿司を食べたいな。いいね」