名探偵浅見光彦と京都近辺

　内田作品には名探偵が何人か登場する。信濃のコロンボ、竹村警部、警視庁の岡部警視等がそれである。その中で最も愛されているのが浅見光彦である。内田作品は全国の（最近は海外も）名所を散りばめながら事件に遭遇し、現地の警察からは胡散臭い目で見られながら、その過程で警察庁刑事局長の兄の威光で資料を集め、協力を得ながら事件を解決する。さながら水戸黄門の印籠のような手品を使うところが味噌であろう。
　内田作品は読んでみればわかるがＨな場面がほとんど出てこない。ほのぼのとした恋心があるだけで女性･子供にも安心して読める。また、各地に伝わる昔話、口伝を誇張して作品の芯にしている。これは上っ面の歴史しか知らない読者にとって面白いこと極まりない。
　作品に登場する場所を求めて旅するのも一興かと思われる。
浅見光彦　作品集（京阪神関連）
天河伝説殺人事件 1988.4.25 奈良吉野・天川村、愛知豊田
城崎殺人事件 1989.2.28 兵庫城崎・出石
琵琶湖周航殺人 1990.1.5 滋賀浜大津・守山・大津
平城山を越えた女 1990.10.5 奈良奈良坂・秋篠、京都浄瑠璃寺
「紫の女」殺人事件 1991.10.31 熱海網代、京都府宇治市
斎王の葬列 1993.3.30 滋賀甲賀郡土山・水口、三重鈴鹿峠・松坂、東京
華の下にて 1995.12.6 京都、東京
崇徳伝説殺人事件 1997.2.28 崇道神社、
皇女の霊柩 1997.6.25 木曾馬籠、信州妻籠、東京品川、群馬松井田、京都ほか
浅見光彦の研究
①浅見光彦のデビュー
　浅見光彦の登場は3作目の『後鳥羽伝説殺人事件』から。　広島県三次市の三次駅構内で東京のOL｢正法寺美也子｣の絞殺死体が発見され、三次署の野上部長刑事の調査により、それが８年前の山崩れで死んだ｢浅見祐子｣と何か関係があるという疑いを持つ。
　そして祐子の実家のある東京の浅見家を訪れ、そこで祐子の兄光彦と出会い、野上と浅見の二人三脚の調査が始まるという流れである。
浅見光彦倶楽部
②浅見光彦の生い立ちについて
　彼は、滝野川小学校、滝野川中学校、小石川高校と進み、一浪。大学は三流有名大学をやっとこ卒業。就職口もなく、兄のヒキで何とか勤めることができた商事会社も長続きせず、自分から辞めた。ということになっている。軽井沢の浅見光彦倶楽部に行くと彼の小学校時代の通知表が残っている。
③浅見光彦と家族
　浅見光彦はいつまでも３３歳。現在、東京都北区西ヶ原三丁目に、家族６人、お手伝い１人と暮らしている。
父はすでに他界していて名前は｢秀一｣、大蔵省の局長を務め、次官目前に早世したエリート中のエリート官僚。
　母の名前は｢雪江｣といい、光彦にとってよき理解者であると同時に、怖い存在。京都の公家の出で、年はすでに７０歳を越えている。作中によく出てくる平塚神社とだんごやをお楽しみください。
だんごや 平塚神社
　趣味は油絵で｢立風会（りっぷうかい）｣という絵の集まりに参加しているし、(9作目『赤い雲伝説殺人事件』）若い頃は日本泳法をしていた事もあり、現在では｢薫永会（くんえいかい）｣という水府流太田派の研究サークルの名誉会長も務めている。(20作目『天城峠殺人事件』)
　その他には｢和子｣という陽一郎の妻と、その息子の｢雅人｣、娘の｢智美｣がいる。それから、光彦には3作目の『後鳥羽伝説殺人事件』で死んだ｢祐子｣と、同じく3作目に名前だけ出てきた｢佐和子｣という2人の妹がいる。しかし、佐和子に関しては殺されたわけでもないのに3作目以降名前すら出てこなくなってしまった。最近になって、彼女がニューヨークに留学中であるという事が判明したらしい。　お手伝いの須美子。本名は｢吉田須美子｣といい、彼女は浅見のことを｢坊ちゃま｣と呼ぶ。彼女は、かつて浅見家で｢ばあや｣と呼ばれていたお手伝いと入れ替わりで入ってきたお手伝いで、出身は両者とも新潟県の長岡市であるらしい。
浅見光彦倶楽部
④浅見光彦と結婚について
　浅見は女性に対して鈍感でもあり、臆病でもある。そのため、その女性に好意を持たれていることに全く気づかなかったり、気づいていてもそれ以上踏み込めない情けない男である。
⑤浅見光彦の愛車について　
　浅見はとにかく飛行機が嫌いである。そのため、地方の取材の時には必ず自分の愛車を使うことになる。３ナンバーのソアラに乗り換えた。軽井沢の浅見光彦倶楽部に行くと初代のソアラが保存されている。
　７５作目の『熊野古道殺人事件』で、内田康夫が乗っていった浅見のソアラは大破してしまい、責任を感じた内田は浅見にニュー･ソアラをプレゼントしている。
浅見光彦倶楽部
⑥浅見光彦の才能について
　彼の才能は、他人と違う観点から物事を見つめることである。つまり、誰もが、｢そんな事聞いて何になるの？｣と思うような質問をしたり、誰もが関係ないと思うような人物や物に主眼を置くのである。
華の下にて
主な舞台：京都市　ヒロイン：丹野奈緒（但し小学生）
あらすじ：
　岐阜県壮川村のダム湖建設工事現場に台風の夜迷い込んだ一人の女。水没から免れた二本の桜、今も湖畔に咲く壮川桜。この二つが重要な意味を持つのである。
　浅見光彦は国際生花シンポジウムの取材のため京都を訪れる。この仕事をするはずだった高田哲郎が殺されたからだ。殺人事件の現場は東山ドライブウエーの沢にかかる小さな橋の下。
浅見光彦倶楽部 壮川桜 事件の現場？
釣堀の近くである。ここの所轄は山科署。ここで山科所の刑事と会うのだ。そして浅見は華道でも異端を発する牧原と出会う。そして牧原の秘書・中瀬が殺され事件は華道にも関わっていくのだった。
『崇徳伝説殺人事件』
主な舞台：京都・讃岐
ヒロイン：坂口富士子
　香川県坂出郡青海町の白峰山中の「かんぽの宿坂出」で句会が開催。老人保健施設「白峰園」理事長栗石清一の代理で坂口富士子が出席。評判を得る。そこで崇徳上皇の話が出る。場所は北嵯峨野、大覚寺の裏あたり。そこで死者が多発していた。
　京都での老人施設での死亡事件も話題に。東京、浅見家。姪の里美が安楽死の話題を持ち出していた。その頃、「旅と歴史」藤田編集長が京都へ天皇家にまつわる怨霊伝説の取材に行くよう話が持ち込まれる。浅見は崇道神社へ行く。出町柳から六つ目の三宅八幡駅。崇道神社で一人の女性に会う。その女性かは「・・・あれは殺人事件なんです。・・」といってフィルムケースを渡し、去っていった。その後、今出川通りの西、飛鳥井にある白峰神宮へ行く。ここも崇徳上皇の霊を祭ってあるのだ。ここで一人の男を見かける。この男こそあの女性が会おうとしていた男に違いない。東京に戻って現像したフィルムには恐ろしい死体が写されていた。その頃、坂出青海町山中で新坂というフリーライターが殺された。男がそしてその背後には福祉を食い物にしている実態が明らかとなり・・・。
『ユタが愛した探偵』
主な舞台：沖縄県
　ヒロイン：式香桜里あらすじ：沖縄の斎場御嶽で男の死体が発見された。彼は「裏の真相」という雑誌社の社長だった。「裏の真相」社員の福川は事件の調査を浅見光彦に依頼する。浅見は仕方なく依頼を引き受け沖縄へ向かう。そこで出会った「ユタ」と呼ばれる式香桜里の不思議な力に浅見は事件のヒントを得る。
清涼寺
　プロローグで彦根で行われたブクブク茶の茶会が出てくる。それを求めて彦根･清涼寺をたずねた。でも、何にもなかった。次回、機会を見て沖縄へ行くつもり。
『天河伝説殺人事件』
主な舞台：奈良県天川村
ヒロイン：水上秀美
あらすじ：
　東京・新宿でひとりの男性が殺された。彼の手には奇妙な鈴があった。同じ頃、後継者争いで揺れる水上家の追善能・道成寺の舞台で水上和鷹が殺される。ふたつの別々の事件がやがてひとつの鈴によって繋がってゆく・・・。
鈴 ＴＶの舞台 天河神社
平城山を越えた女
傷心を抱いて京都・大覚寺を訪れた美術書編集者の美果ーー。その前に娘の行方を尋ねる男があらわれ、数日後、美果は若い女性の他殺体が奈良ホトケ谷で発見されたことを知る。古都を舞台にくりひろげる浅見光彦と美果の推理行。やがて行方不明の新薬師寺秘仏をめぐり彼らと意外な関連性が浮上するが
三州吉良殺人事件
　浅見光彦は、ひょんなことから母・雪江の三州への旅のお供を命じられた。道中「殉国の七士の墓」に立ち寄ったふたりは、おかしなことをいう愛国老人に出会う。ところが、翌朝、その老人の死体が蒲郡の海岸で発見される。死亡状況からすると、何者かに断崖から突き落とされたらしい。が、そのあたりには人が転落しそうな場所はない。三河湾をはさんだ伊良湖岬から死体が流れ着いたのだろうか。警察から嫌疑をかけられた浅見母子は事件の解決に全力を注ぐが
7士の墓 吉良家菩提寺
「紫の女」殺人事件
　熱海市・網代の作家・内田康夫の仕事場に、浅見光彦が訪ねてきた。二人で近くの「月照庵」へお茶に行くと、品のいい和服の女性に姪を助けて欲しいと頼まれた。
　熱海の和菓子店「芳華堂」の娘がその姪で、父母がワインで毒殺され、自分も一度死にかかった、という。その幽体離脱体験で、犯人の後ろ姿を見たというが、警察は自殺として信じてくれない。事件の源、京都・宇治へと、浅見はソアラを駆る。
宇治橋
皇女の霊柩　
舞台：中津川市馬篭、妻籠
　東京都品川区上大崎長者丸の路　第一殺人事件現場、被害者、大学職員、大塚瑞枝。最後の訪問地、八木沢教授宅のパーティ。
　皇女和宮の遺体発掘調査にからむ瀬戸原名誉教授の誕生パーティ。
被害者は長野県木曽郡南木曾町妻籠出身・・・・　
女　滝 藤村の墓 えびすや？ 派出所
　第一発見者は光彦の姪、智美の友達の母だった縁で事件に乗り出す。
ヒロイン：池本美雪　木曾馬篭の出身、「えびすや」の娘近くの永晶寺で島崎藤村の墓の前で一ヶ月前に殺人事件があった。
被害者：弘田裕子、東京の事件と状況がよく似ている。
「えびすや」：土産物屋、喫茶室
駐在所：宿場町から少しはずれたところ。福島署の刑事、大石に会う。すぐ脇を蘭川の急流、男滝女滝がある。

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