滝田は考え込んだが、ここは思っていることを洗いざらいいうべきだと考えたのだ。
ビールを一口啜り、

「うちの専務が就任会見でしゃべった長州と新選組以来、東亜設備さんの受注がガクンと減りました。専務の意向が社内に根強く残っていたからです。社長が新選組の系統にあることはわかっています。専務が下関に行った日、社長は東京駅にいたことはわかってます。

専務が下関で不審死を遂げてから、東亜設備さんの受注が復活したことも分かってます。専務の意向がなくなり、常務が取り仕切るようになったからです。社長と山下さんと井上さんが三人でよく会っていることも分かってます。井上さんはその筋の人です。専務の死は不審死です。何か関連があることは確実だと思います。どうですか、どうお思いですか、私の考えは」

　ああ、お、さすが、と思った土井社長だった。

「なるほどね、でも、君の言ってることはすべて君の憶測にしか過ぎないな。たしかに私の祖先は新選組だったし、長州と戦ったこともある。それがこの現代まで続いているなんて信じられないね。私たちは下関なんか行ってないし、君の憶測で惑わされるのもごめんだな。どうだい、すべてを忘れてくれないかな。きみが君の憶測をどこまで公にしてるか知らないが、きっぱり忘れてくれれば悪いことはしないよ。ま、いっぱいビールでも飲んで考えてくれ」