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　滝田は辞職する日、自分の机の上や中を片付けていた。同僚は急に辞職することになった滝田のことを危惧していた。

　そこに電話があった。

「もしもし、わたし、東亜設備の山下ですが、滝田さん、いますか？」

「もしもし、ああ、山下さん、滝田です。何でしょう。じつは、私、明日で会社を辞めるんで、何もできませんが、なんでしょう？」

「え、会社を辞めるんですか。またなんで？　近いうちにお会いしたいんですが。うちの社長が話したいって、言ってますんで」

「わかりました。ちょっと立て込んでるんで、明日にでも携帯へ電話します。よろしく」

　翌日、滝田と山下は打ち合わせて土井社長と話し合うことになった。
社長も時間が取れないので夕方、１９：００から東亜設備の事務所でということになった。
　事務所は社長以下、営業担当者が数名いるだけの小さなものだ。

　夕方になっていたので滝田は山下の案内で裏口から非常階段を昇って三階に行く。
そこの一室で社長が待っていた。

「やあ、よく来てくれた、滝田君、まあ、ゆっくりしてくれ」

　山下が隣室の厨房から持ってきたビールを指さし、まあ、一杯やろうというのだった。

「山下から聞いたところによると、君は我々が三人で下関へ行ったと思ってるようだね。なんで、そんなことに関心があるんだね。私にはよくわからないが。おまけに君は大沢建設を辞めたようだな。何か言いたいことがあれば、言って見たまえ。出来るだけ答えよう」