２　事件が起きる

　井上の報告を聞いた土井社長はすぐに決断した。

「わかった。このままでは我々は破滅に追い込まれるな。滝田を黙らせるしか方法がないな。どんな方法がベストか、君たちの意見を聞こうか」

　山下が言った。

「滝田が黙ってればいいんですけど、彼が黙認してくれる可能性はないですね。黙認するくらいなら、こんなことするはずがないし。彼が黙認するほどの個人的な弱みがあれば、別ですけど。彼の個人的な事情にそんなことはあるのかな」

井上が言う。

「いや、滝田は独身で、どうやら両親も亡くなっているようです。専務の話に完全に魅了されているようです。黙認するとは思えません。やはり抹殺するしかないようですよ」

「わかった。あとはいつ、どうやって抹殺するかだな。ちょっと考えよう。辞職した後は、連絡しにくいな。よし、山下君、滝田の退職する前に電話して、呼び出してくれ」