井上は翌日、興信所の人間を呼び出した。

「おい、俺だ、井上だ。おまえ、この間俺たちを探っていただろ。わかってるんだ。誰から頼まれたか、調査報告書を教えろ。決して依頼主に言うな。いいな、このままで済むと思うなよ。おまえの命がかかってるんだぞ」

　脅された男はすぐに白状した。

　相手は裏街道の井上だ。三人を尾行したとき、分かった。下手すりゃ、自分の生命に関わると。

男はすぐに資料を持参した。これで勘弁してください、誰にも言いませんから、と恐縮して。

　そして井上は子飼いの男を使って山下の身辺を洗った。

山下は巣鴨駅近くのワンルームマンションに住んでいた。独身だ。洗ってみたが、特に不審な点はない。大沢建設も洗ってみたが、特に何にもない。
しかし、とんでもないことが判明した。

　山下は会社に辞表を提出し、来週には退社するようだ。これは何でだろう。今回の件には大沢建設が関係していないことの証か。個人的な行動だったことの証か。
　それとも個人的な立場になってさらに行動を激化するつもりなのか。
このままほっとけば、そのうちに下関の三人の行動が表面化するかも。

証拠はなくても、東亜設備の評判は一気に低下し、会社の存続も厳しくなるだろう。
そうすりゃ、われわれ三人の前途はなくなる。 

　井上はわかった情報をもって土井社長に報告した。