朝鮮通信使上陸港留之地を覗いていると、一人の男性がなにやらうろうろしている。
何してるんだろうと不審に思っていたら、男性が振向いた。

　あれ、見たことあるような人だ。

「あれ、あなた朝見さんじゃないですか！　私、以前お世話になった山口県警の」片桐です。お久しぶりです」
　やあ、以前、山口県での事件で会った片桐さんだ。
「やあ、お久しぶり。今日は門司から下関をルポしてるんです。なにかあったんですか？」
「じつは、二週間ほど前に、この前の海で水死体が上がったんです。事故だということで決着したんですが、なんかしっくりこなくて、今日、もう一度現場をチェックしに来てたんです。ちょうど、いいですね。少しお時間があれば、ご相談したいんですが」

「いいですよ。でも、これから門司まで出てルポしなきゃならないんです。少しならいいですよ」

「わかりました。手短にします。あ、それから私は今、下関署にいるんです」

　片桐部長刑事は名刺を朝見に渡して手短に解説した。