――よし、ふぐの碑を観てから、専務を説いて、赤間神宮の前の信号で国道を渡らせろ。そばに朝鮮通信使上陸の碑があると言って。おもしろい、いい碑だぞ、見る価値があるぞと言って。　君はそこで別れて唐戸市場の近くで待ってろ。あとから車で迎えに行く。いいな。―― 

　近くには防犯カメラはないようだが、何処にあるかわからない。出来るだけ気をつけよう。 

　やがて、酔っ払った千鳥足で専務が赤間神宮の前の横断歩道を渡ってくるのが見えた。朝鮮通信使上陸の碑を捜しているようだ。
　土井社長と井上は近づいていくのだった。 

――やあ、専務、朝鮮通信使上陸の碑はここですよ。ご案内します。
酔っ払った専務は声の主が誰かわかっていないようだった。
　朝鮮通信使上陸の碑のそばまで連れて行った二人は専務を突き飛ばした。倒れ込んだ専務は頭を打って気を失ったようだった。
これ幸いと二人は専務から携帯やその他のものを奪って海に放り込んだ。

――さあ、終わった、帰ろう。運がよければ専務は死なないだろう。運が悪けりゃ、溺死するだろう。

　二人は車でその場を去り、途中で山下を拾い、壇ノ浦パーキングヘいくのだった。
そこで、土井社長の車とともに、小倉へと行く。
井上が借りたレンタカー会社近くの空き地で、井上が車を乗り捨てる。そして少し離れたところまで監視カメラを気にしながら歩き、土井社長の車に乗ってその場を去るのだった。

車中で一夜を過ごした三人は土井社長が借りた周南市のレンタカー会社で車を返し、新幹線で東京へ帰った。
これで、専務の対する復讐は終わったのだった。