＊　　専務の話の波紋 

　下請けのひとつ、東亜設備の土井社長は困惑していた。専務の演説は実に不快だった。
最大の理由は、彼の祖先は土方歳三の部下で、新選組に所属していたのだ。祖先は函館で死んだが、その子孫は関東で生計を立てていた。
　彼が、彼の祖先が新選組に所属していたことは、公にはなっていない。
しかし、本当だろうか。
専務が交替しても、いや、交代したからか、大沢建設の受注は順調だった。
利益もそこそこある。
しかし、東亜設備の受注は減ってきた。
今までは他の下請け会社よりも優先的に仕事を受けていたのに。最近少なくなった。
このままではじり貧だ。
　どうしてだろう？
　じっくり考えてみると、そうか、社内の人間の幾人か俺の祖先のことを知っている。
　専務に俺の出自が伝わっていてもおかしくない。
　どうしよう？
　悩む土井社長だった。
何とかしなければ、会社はやっていけない。
専務を排除しなければ。