「もしもし、赤間神宮の前の海に人が浮かんでいます。動きがありません。すぐ来てください」「わかりました、すぐ行きます。待っていてください」 

　五分もすると下関署のパトカーと救急車がやって来た。そのときは、岸壁には人がいっぱいだった。
「さあ、どいてください。通報された方はどなたですか。ありがとう。ちょっと待っててください」
救急隊員が海に入り、浮いている人を救いあげた。人工呼吸をするまでもなく、死亡しているのは明らかだった。救助された人は救急病院へと運ばれたのだった。

下関署の係官は通報者に事情を聴いた。しかし、特に何も聞けない。通報者は住所・氏名を告げただけで解放されたのだった。
通報した中年夫婦は、これから、長府へと向かい、功山寺辺りを散策する予定だった。しかし、事件に巻き込まい、なんか、観光する気力が失せてしまった。
まあ、しょうがないか。あきらめてしまったのだった。