「ああ、竹村さん、どうしてここへ」
「ああ、捜査本部が解散しましてね。事件解決に役立ってくれた巴御前にお礼に来たんですよ」

　戻ってきた末次に、竹村警部は頭を下げるのだった。
「長野県警の竹村です。あなたがもたらしてくれた友恵さん、いや、巴御前のメモが事件解決のキイだったんです。ありがとう」

　そうして竹村は去っていった。 

　朝見と末次はそこから寝覚めの床へ行き、前田幸一の霊を慰め、木曽福島から名古屋へ、そして新幹線で東京へ戻ったのだった。 

　帰りの新幹線で、朝見は考え込んだ。
「今回の事件は何だったんだろう。解決したが、巴御前の力だったとしかいいようがないな。巴御前の資料をもたらしてくれた末次の力か。それにしても、俺は何したんだろう。木曽路のルポに行ったのが、すこしは絡んでるんか。もう、いいや。こんな生活は」

　考え込みながら寝込んでしまった。

　やがて東京駅に着いた。
「着いたわよ。起きて！　いい慰霊の旅だったわ。ありがとう」
　末次に起こされ、はっと、現実にもどった朝見だった。
 
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　――完――