その夜、長谷川部長刑事と長野県警の木下は太田から教わったスナックへ行った。
そこで、大崎のことを調べたのだった。
バーテンは知っていることをすらすらとしゃべった。
名前が大崎五郎、近くで小さな個人会社を営んでいること。経営は苦しいらしいが、前田氏としょっちゅう、飲みに来ていたこと。四十歳くらい。以前、交通事故を起こしたことがあるらしいとのこと。前田に交通事故に注意するように言っていたこと。最近、ほとんど来なくなったこと、等々を。

　その会社へ行ってみると、閉まっていた。廃業したらしい。
　二人は、過去の交通事故も調べた。
特に問題はない。そこで指紋も写真も手に入れた。
　彼は仕事もしてないのに裕福な生活をしているようだ。 

　岡部警視の指示で、前田の銀行を調べた警視庁だった。
　前田の預貯金はすべてなくなっている。出入記録や払い出し記録はほとんどない。すべて現金で預けたり引き出したりしている。
一点、木崎物産という会社からの払い込みの記録があった。この会社は実在しているが、なんにも活動していないようだ。
設立登記を調べると、河合という司法書士の名が浮かんだ。
そして前田がうろついていたビルに事務所があった。
土地の譲渡を迫った不動産会社では、サラ金会社から譲渡を承知した前田の捺印書類を受けとったのだ。売却益の大半をサラ金会社に渡すという条件で、土地の譲渡を迫るように言われたのだ。持参した弁護士は不動産会社から頼まれていただけだった。
サラ金会社は木崎物産から書類を受け取っていた。
　これらの金額を合わせると数十億になるようだ。
　どうやら、黒幕は河合という司法書士か。
　しかし、大崎との接点は見つからなかった。

　竹村警部の捜査はまたもや、行き詰まるかに見えた。