第六章　　　事件解決へ 

１　　竹村警部の苦悩 

　寝覚めの床と巴が淵の事件の捜査が順調にいかず、竹村警部は苦悩していた。
　夫妻が義仲館にいたことはわかっている。しかし、その近辺で誰かと接触した形跡はない。
寝覚めの床の付近でも目撃情報はない。監視カメラにも映っていない。
義仲館から巴が淵までの道も徹底的に調べた。しかし、夫妻の形跡はない。
少ない監視カメラにも映っていない。
　夫妻が殺されるような原因は、友恵の両親に訊いてもなにも浮かんでこない。
　捜査は行き詰っていた。
　唯一、被害者前田夫婦の父親が何らかの要因ではないかと考えられた。

生前の前田の様子を踏査すべく、警視庁へ内々に捜査を依頼したが、なかなか返事が来ない。　まあ、内々の捜査だから進捗状況がよくないのはわかる。正式の捜査じゃないので。
逆のことを依頼されてもまあ、そんなものだろう。
　でも、何らかの情報が欲しい。
　待っているうちにやっと警視庁からデータが送られてきた。
　それによると前田は資産家だった。しかし、騙されやすい性格で、毎夜、お酒を飲みに出かけてたようだ。酒好きな男、あまりいい性格じゃないな。
　息子夫婦とは同居していたようだが、単に、同居していただけのようだ。父親との接点はほとんどなかったらしい。
　父親の死後、資産はすべてなくなり、財産はすべてなくなったようだ。
　それで息子夫婦は木曽路へと転居したらしい。

　警視庁からの情報はそれだけだった。