小一時間経って河合から友恵に電話が入った。
「前田さん、大下です。ちょっとお話があります」
「ああ、河合さん、いいですよ。どんなお話でしょう」
「じつは、太田さんからお聞きしていると思いますが、お父さんが生前、飲み屋などでお付き合いされていた大崎さんが見つかりましてね。かれもお会いしたいと言ってるんで、今度お会いできないかと思いまして」
「え、義父のお仲間の大崎さんが！　そうですか！　お会いしたいですね」
「じゃ、今度の水曜日、善光寺でどうですか。お父さんの慰霊のためにも。午後二時ごろ、善光寺の六地蔵の前でお待ちしますが。如何でしょう。そこから電車でくればこの時間なら十分でしょうから。御主人の幸一さんとともに」
「わかりました。ちょっと主人とも相談します。あとで電話します」

　電話を切った友恵は幸一と相談して、そのお日程で長野善光寺に行くことを決めたのだった。 

　河合は大崎と話すのだった。
「うまくいきそうだ。会って話すのは僕の役目だな。きみは前田さんの慰霊を装ってくれ。最悪の場合を想定して木曽路を探索しておこう。巴御前らしいから義仲の跡を見ておこう。人の少ない、監視カメラのないところも調べとかなくっちゃな。火曜日の朝、車で行こう。その夜は長野市内で宿泊して、な」
「わかりました。お任せします」

　彼らは火曜日の朝、レンタカーで出発するのだった。
　中央道で中津川経由、寝覚めの床へ行く。
　周囲の道路を調べる。
そこから義仲館へ。この辺は車も多そうだ。
ここから地道を走って巴淵へ。いいね。人とも車も少ない。夜だったら誰もいないんじゃないかな。
そこから長野道で塩尻インター、安曇野インター経由で久米路峡へ。
　そして長野市内へと行くのだった。夜の七時だ。
近くのビジネスに宿泊する。
　大体の状況はわかった。