翌日、河合はＳＫＳ調査の太田を呼び出した。

「太田君、ちょっと聞きたいことがあるんだ。僕の言うことを訊いて切れよ。悪いことはないから」
　河合は昔から世話になっている司法書士だ。彼の言うことは訊かないわけにはいかない。
「はい、いいですよ。で、何なのでしょう」
「いや、実はね、君が池袋界隈のスナックで、ある人間の消息を調査してるって話を聞いたもんでね。どういうことか教えてもらおうと、思ってね。僕の行きつけのスナックで聞いたんだよ。何なのかなって僕も商売がてら、すこし興味があってね」
「ああ、そうなんですよ。さすが、河合さんですね。腕利きの司法書士ですね。でも、調査は終わりました。この前、長野市で事故死した男性の遺族からなんです。生前の行動を知って、個人を慰霊しようっていうんです。でも問題になるようなことは何にもなかったんです」
「そうかい、でも、結果を僕にも教えてほしいな。どうこうしようっていうんじゃないけど、面白いじゃないか」
「わかりました。本来は第三者には教えちゃならないんですけど、河合さんならいいですよ。帰ってコピイを事務所へ送ります」
「うん、ありがとう。待ってるよ」

　なんの疑問も抱かずに帰っていった太田だった。 

　翌日、調査報告書のコピイが河合のところに届いた。
内容は特にない。池袋のスナックで一緒に飲んでいたのは大崎という男だった。
それだけだ。それ以外の行動は明記されていない。監視カメラも当たったらしい。街中を歩く前田の姿はほとんど写っていなかったようだ。警察じゃないから、詳しくは調べられなかったんだろう。
　太田のメモがついていた。
――よっぽど父親のことが心配なんだな。でも、どうして調べるんだろう。すごい執念だな――

これは少し気になった。