第五章　　　木曾路の惨事 

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 しばらく飲みにも行けなかった大崎は、たまらなくなってよく行っていたスナックへ顔を出した。
「よう、久しぶり。やっぱりそこで飲むのはいいね」
「やあ、大崎さん、お久しぶり。まあ、ゆっくり飲んで行ってください。いつも一緒に来ていた前田さん、亡くなったんですってね。残念ですね」
　しばらく歓談しながら飲むのだった。

　そして、バーテンが言った。
「このあいだ、前田さんの消息を訪ねてきた人がいてね。どこで誰と飲んでいたか、調べていたみたいですよ。どこかの興信所からでね。息子さん夫婦から頼まれてたみたいです」
　聞いた大崎はびっくりした。
「おいおい、なんだい。そうなのか、それでどうしたんだい」
「いちおう、私の知ってることは言いました。大崎さんの名前も出しちゃいました。ああ、そうだ、かれの名刺も貰ってたな」
　そういってバーテンは興信所の所員の名刺を出した。

「ほら、この人ですわ」
　名刺にはＳＫＳ調査の太田とあった。
　話を聞いた大崎はびっくりした。

――河合の言ったとおりだ。やはり息子夫婦は事情を知りたがっているんだ。俺の名前も知っちゃったか、まあ、それ以上の詳しいことは知らないだろうが、放ってはおけない。

「へえ、そうかい。何なんだろう。よくわからないな。まあ、いいか」
　心の動揺を隠しながら、大崎は適当に飲んで、引き揚げた。
　とにかく、河合と相談しようと心に決めて、スナックを後にしたのだった。
　さあ、これからどうしよう？
　大崎が帰った後、バーテンは大崎の態度が気になった。そして興信所の名前と調査に来た所員の名前をメモにして残したのだった。