「末次さん、ご迷惑をかけてごめんなさい。また変なお願いがあるの。この書類、預かっていてほしいのよ。　あなたしか預かってくれる人いないの。ごめん、お願い」
「いいわよ、この前の書類と同じね。でも、何なの？　なんか秘密があるの？」
「ええ、この前お願いしたときは、何も言えなかったの。でも、木曽路に移って、すこし心が落ち着いたわ。いいわ、すべてお話しします」

　そして前田友恵は抱えている悩みを総て打ち明けたのだった。

話を聞いた末次女史はびっくりした。

「そうなの、そんなことがあるの。あなたが疑問に思うことは当然だわ。でも、確かにこの状況では警察は動けないわね。そうね、あの朝見さんなら、力になってくれるかも」
「そうなの、わたしもそう思うわ。でも、すぐにじゃなくていいのよ」
「わかった、じゃ、とにかく書類は私があずかっておくわ。でも、元気でよかった」
「そうよ、木曽路っていいところばっかりよ。末次さん、落ち着いたら電話するわ。遊びに来てね」
「わかった、いつか行くわ」　そうして二人は別れた。

これが二人の最期の出会いだったのだ。