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　翌日から興信所の調査員太田は池袋界隈の調査を始めた。
スナックを順々に回り、写真をもって、こんな人物が客で来店したことがないか、聞き回るのだった。これは大変な作業だった。スナックとは限らないし、また協力が得られない店もある。それでも、興信所はしぶとく調査をするのだった。

　そして半月ほど経過して、やっと前田氏の行きつけの店が見つかった。
よく来店していたようだ。金払いのいい店としては上客だったらしい。いつも二人連れだったようだ。相手は中年の男だった。
　バーテンに訊く。

「この写真の人は前田さんていうんですよ。一緒に来ていた人はなんていいました？」
「うーん、最近、ふたりとも来ませんね。そうですか、この人は前田さんですか。一緒に来ていた人は、誰だったかな。ああ、そういえば、大崎さんって言ってましたね。そんなことを訊いた記憶があります。でも、このところ、ふたりとも来ませんね」
「そうですか。じつはこの前田さんは、この前長野県で事故死しちゃったんですよ。大崎さんとの会話、何か憶えていませんか？」
「え、そうなんですか」

　バーテンは何かあるんだなと感じた。
「どうして、そんなことを訊くんです？　あなたは何？　警察ですか？」
「いやいや、私は興信所の者です。遺族に頼まれて故人の生前の行動を調べてるんです。できたら、その大崎さんにも会いたいな」
所員は名刺を出して、さらに頼むのだった。

これが大きな間違いだったのだ。
しかし、バーテンはそのまま口をつぐんでしまった。
　興信所としては、これ以上の調査は出来なかった。
　とりあえず調査は終わった。

　興信所では前田夫妻に電話で知らせた。