警視庁に行った竹村と木下は岡部警視と相談するのだった。
「岡部さん、本来は長野県警から警視庁へ正式にお願いするべきなんですが、そうするべき理由が見当たらないんです。今日のお願いはあくまでも私の個人的なお願いってことになる、まったく非公式なことなんです。
実は先般、東京・北区に住んでいた前田健司という男性が長野市郊外の久次米峡で転落事故で亡くなりまして。これは単なる事故死だったんですが、そのあと、遺族の息子夫婦が事情は分からないんですが、長野県の木曾に引っ越してきたんです。そしてこの間、ふたりとも殺されてしまいましてね。
その捜査が難航してまして。どうも、その要因は東京にあるんじゃないかと思われるんです。それで、父親の前田健司のことを調べてもらいたくてやって来たんです。彼の人となり、生前の状況等、わかる範囲で調べて頂きたいんですが」

「うーん、なるほど。木曽での事件捜査、苦労されてるようですね。わかりました。内々で可能な限り調べましょう。北区の人間ですね、それじゃ、池袋署の堀越君に頼みましょう。
ちょっと、堀越君の予定を聴いてみます」
　しばらく席を外した岡部が戻ってきて言った。

「堀越君も了解してくれました。よければこれから池袋署へ一緒に行きましょう」
　三人は池袋署へ行き、堀越警部と打ち合わせるのだった。