３　　巴淵での事件発生 

　翌日、近くの巴淵で人が浮かんでいるのが発見された。
発見したのは巴淵にやって来た観光客だった。
ここは、巴御前の伝説のある巴が淵だ。義仲と共に幼少を過ごし、義仲と生涯を共にした愛妾巴の名にちなんで巴ヶ淵と呼ばれる。木曽川が山吹山のふもとを迂回して形づくる深い淵に、神秘的な渦が巻いている。この淵に棲む竜神が巴に化身して義仲を守り続けたという伝説やその他多くの伝説が残る場所らしい。
山吹山の四季折々の風情は筆舌に尽くしがたいほどの趣きで、特に秋の実り豊かな紅葉が水面に映り込むさまや、春に山吹が咲き乱れ、巴状に蒼く渦巻く淵とのコントラストは見ごたえたっぷりなのだ。
　発見されたのは前田友恵だった。やはり亡くなっていたのだ。
死因は溺死だった。

　これは連続殺人事件だ。竹村は今後の捜査活動について思案するのだった。
このあたりで犯行が行われたことは間違いない。
しかし、夜になるとこのあたりには人気は全くない。目撃者がいるかどうか、まったくわからない。監視カメラもほとんどない。
とにかく、徹底的に聞き込みをするしか方法はなかった。
もう一つ、巴御前として戦う相手がいたのか？
　それが問題だった。