母親から事情を聞いた竹村だったが、よく理解できない。
　でも、何らかの計画があったのか？　巴御前として戦う相手がいたのか？　巴御前の相手の現在の平家はいったいなにものなのか。
　夫婦の部屋も徹底的に調べた。ごく普通の生活だったようだ。パソコンもない。郵便物も残っていない。
ひっそりと生活していたようだ。二人が生活するようになってからの民宿の顧客名簿はあるが、特に気になるような顧客はいない。

　とりあえず久米路峡での父親の事故の調査をする。
この時は竹村は関与していなかったのだ。

県警本部に問い合わせ、事情を聴いた。
その結果、事件性は全くなく、事故死と判断されたのだ。
この時遺族としてやって来た二人が前田夫妻だった。
彼らの話にも何の疑問もなかったのだ。 

　木曽警察署の捜査本部としては手の打ちようがなかった。
　この辺りは静かな場所で、監視カメラも少ない。夜も遅くなればほとんど人通りもない。どこが犯行現場でどこで木曽川に投げ込まれたのか、判明しなかった。
　妻の動向も不明だ。