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　翌日、近くの民宿から情報が入った。
男はこの民宿で仕事をしていたという。
　竹村警部は吉井部長刑事と事情聴取に当たった。
その結果、男の名は前田幸一・４０歳と判明した。彼の妻はこの民宿の経営者の娘だった。事情はよくわからないが、男の父親が長野市郊外の久米路峡で事故死し、その後、妻の実家へ移住したという。
移住した実情はよくわからなかった。娘から何も聞いていなかったのだ。
　そして数日前、ちょっと用事ができたと言って、娘と二人、休みを取ったらしい。どこへ行き、何のためか、娘の親は訊いていなかった。
　その男が寝覚めの床でどうして死んだのか？
　娘はどうしたのか？さっぱりわからないという。
　娘の親は涙をこらえながら言うのだった。
　一つだけ、娘が最近よく言っていたのは、「私は巴御前よ。義仲と一緒に平家を倒すのよ、きっと」という言葉だった。