悲鳴で気を取り直した男は、１１０番に電話した。

「もしもし、寝覚めの床の木曽川で人が浮いてます。すぐ来てください。死んでるかもしれません」
「わかりました。すぐ行きます。流れてませんか」
「いや、じっとしてます。でも、急いでください」

　すぐにやって来た木曾警察署と救急車だった。寝覚めの床から助け上げたが、すでに死んでいるのは明らかだった。死んでいたのは４０くらいの男だった。

直接の死因は転属した際に受けたと思われる頭部の挫傷だが、くびに絞められたような痕があることから他殺の疑いがあり、警察は木曾福島署に捜査本部を設置して捜査に乗り出した。現場の上流で転落した可能性もある。

　第一発見者の二人は警察の事情聴取を受けたが、何も知らない。しかし、時間を取られ、男はひざを痛め、びっこを引きながら車に乗って帰ったのだった。

　被害者は誰だ？　木曽警察署では捜査を開始した。