朝見充彦8-00

（43）

「実はね、この二つの事件は自殺と事故死で処理されてるんです。でも、紫式部と小野篁、閻魔大王は密接な関係にあるんです。事故死した神崎史郎さんが事故の前に行っていた十王堂は、閻魔大王が死んだ人の魂を極楽か地獄かと決める場所なんです。
　この二つの事件、なんか関係がありそうなんです。水野かおりさんの書いた小説は、現代の源氏物語なんですってね。ひょっとしたら神崎さんが光源氏のモデルなんじゃないのかな？　そのほかにモデルらしき人がいて、それらが重なり合って、水野さんは苦痛になって、自殺したんじゃないのかな？
　そしてこれらの事柄が重なって、神崎さんは殺害されたのじゃないかな？
　水野さんの小説の中の人物とそれらのモデルと考えられる人って、誰なんでしょう。黒川さん、一応、マスコミの編集長ですから、なにか情報はないですかね」

　話を聞いた黒川はびっくりした。
「おいおい、なんでこんな話になるんだい。どこからこんな話を仕込んだんだい。僕には情報はないな。ああ、そうだ、《週間マンデー》の代表の安倍伸二さんなら何か知ってるかもしれないな。でも、信用できる話じゃないと思うよ。朝見ちゃんの言ったことが本当なら、きっと。警察が乗り出してるだろうから。
　それはそうと、小野篁と紫式部と閻魔大王の話か、面白い話だね。朝見ちゃん、一度まとめてみてよ。雑誌に掲載できるかもよ」
「わかりました、安部さんのところへ行ってみます。証拠のない話ばっかりになりそうなんで、警察にも相談できないんですよ。少しでも具体的な話があればいいんですけどね。これは以前、京都でお世話になった新聞社の事件記者から聞いたんですよ。いずれ、何らかの形でまとめてみます。その時はよろしく」
「うん、行ってきたまえ。安部さんには電話しておくよ」
「ありがとうございます」

続く