ふと頭上を見るとお茶碗が飾ってある。
「あれ、栗原さん、あの茶碗は何なのかな？」
「あれは閻魔様が使っていたお茶碗らしいわ。でも、不思議ね」

外に出てみると、紫式部の像があった。
そのわきには大きな塔がある。
「これが紫式部供養塔なんです。建立するとき、閻魔大王がやってきて指導したそうです」
「へえ、立派な供養塔ですね。そうか、閻魔さんと小野篁と紫式部ってこういう関係にあったんだ。その背景には源氏物語があるんだ。
　ということは、紫式部のお墓で自殺した女流作家と十王堂で死んだ人とは現代の源氏物語で関係があるんだろうか？　
地獄から救出された紫式部、現代の作家の苦悩から救出されたい女流作家、どう絡むんだろう。ひょっとしたら、十王堂で死んだタレントは、光源氏なのかな？」

　独り言を訊いた栗原が言った。
「そうなんです。私もそう思いました。でも、警察で捜査するほどの証拠がありません。私の想像だけでは警察は動いてくれません。でも、朝見さんなら私の考えていることに理解を示してくれると思ってました。嬉しいです」