第一章　朝見、京都へ 

１　牛若丸の足跡

 博多での事件が解決して、ほっとしてのんびり過ごしている朝見だった。事件は解決したが、これは朝見にとって何の意味もない。
　本業はさっぱりなのだ。
　今後、どうしようと考えこんでいた朝見に電話が入った。

　日本紀行の黒川編集長からだった。
「朝見ちゃん、暇だろ、明日にでもこっちに来てもらえない？　面白い話があるんだよ」
　まったく、いつも暇だろ――しか言えない編集長だ。
「まあ、行きますが。面白い話って何ですか。」
「まあ、そいつはこっちに来てから話すよ。じゃ、明日、待ってるよ」

　翌日、日本紀行へ行った朝見だった。
「編集長、とにかく来ましたよ。どんなお話でしょう」
「おお、よく来たな。まあ、ちょっと出ようか。ゆっくり話をしようぜ」
　いつも行く喫茶店に行った編集長が言うのだった。
「朝見ちゃん、これまでの取材で、けっこう、京都に行っただろ。いいところだね。じつは先月、ちょっと業界の用事があって、俺も京都へ行ったんだ。
　そこで、仕事が終わってから疏水へ行ったんだ。地下鉄の蹴上駅からインクラインを歩いて疏水を見に行ったんだ。すごいところだね。琵琶湖から水を京都まで引くなんて。