北警察署の捜査会議の席上、捜査員の一人が思い出した。
「これ、けっこう有名な女流作家ですよ。確か現代の紫式部といわれています」
「そうか、よし、警視庁に捜査を頼もう」 

　京都府警から連絡を受けた警視庁が調べた結果、現代の紫式部といわれる水野かおりで間違いなかった。
彼女は政界、芸能界、その他タレントたちの行動を本にまとめた作家だった。
それがけっこう売れていた。
　一人の主人公がいろんな女性遍歴を重ね、その時々に政界や芸能界の内幕を書きつのっていたのだ。
当然、いろんな問題が発生するのだった。
紫式部の「源氏物語」で光源氏が上流階級の中を泳ぎ回ったように。

　そう、彼女は現代の紫式部かといわれる女流作家だった。
　しかし、最近、本が書けなくて悩んでいたらしい。モデルと想定される面々から、それとなく批判され、圧力もかかっていたようだ。
　京都府警から連絡を受けた遺族の話にも特に変わったことはない。
最近、本が書けないと悩んでいたようだった。でも、京都まで来て死ぬなんて。
とても信じられない。といって。

京都府警としては自殺として処理したのだった。