岡田の将来

岡田を誑し込んで情報を得た水井は、情報によって得られた利益を自分のものとして満足したのだった。そしてうまくいけば岡田を自分の部下にして、これからのＫＭ企画での仕事に生かそうと考えたのだった。
それには岡田を辞めさせて自分のところへ移籍させようと考えた。
　そこで西東電子あてに匿名で通告した。 

――あなたの会社の機密情報が洩れてますよ。どうもあなたの会社の岡田っていう人から洩れているみたいですよ―― 

それを聞いた西東電子は内部調査を始めた。その結果、その通告通りだとわかったのだ。
　そして岡田を呼び出した。
「岡田君、君、わが社になんかうらみでもあるのかい？　機密情報を漏らすなんてどうかしてるよ。これは懲戒免職にあたるだろう。その事情は聴くまい。でも、いままでうちに尽くしてくれた君のことだ。告訴なんかはしない。しかし、会社にはおれないよ。即刻、退社してもらおう」
　情報をＫＭ企画に洩らしてから、ある程度、覚悟していた岡田だった。
「わかりました。辞めます。いままでありがとうございました」
　そうして、西東電子を辞めた岡田だった。
しかし、これからどうしよう。
　三田と共に、自分の将来を考えていた岡田のもとに、水井から、連絡が入った。
「どうだ、元気にしてるか、一度、こっちへ来ないか。相談したいことがあるんだ」
　翌日、水井のところへ出向いた岡田だった。
「三田君から聞いたよ。君、会社を辞めたんだってね。どうだい、うちに来て俺の仕事を手伝ってくれないか。
非常勤でもいいよ。できるだけのことはしよう」
　話を聞いた岡田は少し考えて承諾した。
「そうですね、僕も生活がかかってますから。よろしくお願いします。でも、週三回くらいにしてもらえませんか」
「いいよ、じゃ、明日から来てもらおうか」 

　こうして岡田は水井の仕事を手伝うようになったのだった。手伝っているうちにＫＭ企画の本当の姿がわかってきた。
　相変わらず、いろんな会社の情報を得て、それを後発の会社に売っている。得た情報の程度を考えて、売り込み先と売り込み金額を検討するのが仕事だった。
　しかし、水井の仕事を手伝っているうちに、岡田の心にいろんな疑問がわくのだった。
こんなの、反社会的行為だ。新しい仕事も見つからないし、かっ替えこんでしまうのだった。