翌日、朝見は読日新聞社へ行くのだった。島崎記者に会うために。

「島崎さん、こんにちは。また、お願いがあります」
「やあ、朝見さん。いいですよ。でも、まあ、よくあるもんですね。今度は何ですか。まあ、うちのためにもなりますから、いいですよ」
「実は、数週間前に愛知県蒲郡の三ヶ根山の殉国七士の墓の裏で人が殺されたんです。その人は東京の岡田さんって言いましてね。某電子機器メーカーの技術者で、二年ほど前に、機密情報をある技術コンサルタントを経由してライバル会社に洩らしたんです。それで会社を辞めてるんです。その辺の事情が読日新聞のデータベースにないかなと思いまして。特に技術コンサルタントの情報がね。それとそのちょっと前に池袋署管内で、痴漢騒ぎがありまして。まあ、これは女性の勘違いだったんですが。これらが、何か関連がないのかなと思ったんです」
「そうですか。二年ほど前の技術流出事件ですか。うーん、なかなか難しそうですね。まあ、調べてみましょう。痴漢冤罪事件も。へえ、殉国七士の墓ですか。知らなかったなあ。
　ちょっと、時間がかかるかもしれませんが、調査してみましょう。しかし、朝見さん、よくもいろんなことに首を突っ込みますなあ」
「まあ、これが私の悪い癖なんです。自分でも困ってますけどね。お願いします。よろしく」