第三章　　朝見、乗り出す

 平塚神社で

 豊川稲荷や桶狭間の合戦跡のルポから帰って、資料をまとめた朝見だった。
一応、資料はまとまり、日本紀行へ提出したが、三ヶ根山で遭遇した事件が少々気になっていた。　そこへ旧友の松田から電話があった。
この前、独身連盟を脱退して、結婚した男だ。「
やあ、朝見、元気かい。ちょっと話があるんだけど」
「なんだ、松田か。新婚生活はどうだい。うまいことやってるか？」
「ああ、俺は今、幸せだよ。でも、今日はそのことじゃないんだ。大学の同期で、俺が付き合いのある大野ってやつからの頼みなんだ。まあ、彼は我々と違って、理系だから学生時代はほとんど付き合いがなかったけどな。そいつが非常に困っているらしい。俺に頼ってきたんだ。朝見の意見を聞きたいって。なんかの事件らしいよ。ちょっと、あってやってくれないか」
「ふーん、大野って男、知らないな。でも、松田の頼みなら断れないな。いいよ、今度の土曜の午後なら、体を開けとくよ。で、どうしたらいいんだい」
「すまんな、じゃ、頼むよ。少し訳ありそうだから、とりあえず、平塚神社でどうだい。平塚亭じゃ、ややこしい話はできないだろうから。よければ、午後一時に、平塚神社で。俺が案内していくよ」
「わかった。俺に何ができるか、わからないけど、とにかく会おう」