＊

 　蒲郡署では捜査会議が開かれていた。
三ヶ根山の事件の被害者の身元が分かったのだ。
鈴江警部が席上、口火を切った。
「とにかく、東京の人間だ。現地で調査は必要ですね。とにかく、警視庁へ連絡を取りましょう。所轄は池袋署らしいけど、我々には土地勘がない。池袋署の協力が必要ですね」
長富部長刑事がつけ加えた。「この前、現場を再捜索していた時、東京のルポライターで名探偵と評判の朝見さんに会ったんです。彼には、以前、蒲郡で起きた事件の解決に知恵を借りたんです。出来たら、今度もあって彼の知恵を借りたいですね」
愛知県警から来ていた木谷警視が言った。
「おいおい、その朝見って民間人だろ。自分たちは刑事なんだぞ。プライドがあるだろ。軽々しく、そんなことを言うな。気をつけろよ。
そうだな。よし、分かった。鈴江君と長富君、東京へ出張してもらおうか。とにかく、まず警視庁へ行ってくれ。そこの捜査一課に岡部警視がいる。彼とは知り合いだ。ちょっと、電話してみよう」
　その場で木谷警視は警視庁へ電話した。
「もしもし、岡部さんですか？　私は愛知県警の木谷です。お久しぶりです。ちょっとお話があるんですが」
「やあ、木谷さん、お久しぶりですね。何でしょう」
「実は、こちらで殺人事件がありまして。身元がわからず困っていたところ、警察庁から連絡がありまして。指紋照合の結果、そちらの池袋管内で照合されまして。池袋署へ行こうと思ってるんですが、ご案内していただけないかと思いまして」
「ああ、そうですか。その件はこちらにも届いています。こちらへ来ていただければ、池袋署の担当を紹介しますよ」
「ありがとう。じゃ、明日にでもうちの担当を向かわせます。よろしく」