翌日、日本紀行へ行った朝見だった。

「よく来てくれた。ちょっと出ようか」
近くの喫茶店に行って、コーヒーを呑みながら黒川編集長が言うのだった。
「じつはね、この前、歴史の本を読んでたらね、戦国時代が終わるきっかけは、織田信長が今川義元を敗った桶狭間の合戦なんだってことを知ったんだよ。その古戦場の跡がどうなってるんかなと思ってね。ちょっと、調べてきてほしいんだよ。愛知県にあるんだ。おまけに愛知県といえば、家康の生まれたところ。吉良上野介のところでもあるんだ。ちょっと行ってみてよ。それ以外でも、朝見ちゃんが興味のあるところをルポしてきてよ」
　面白そうだなと思った朝見だった。
「わかりました。私はいつか、天竜川を下ってみたかったんです。そこらも含めていいですか」
「いいよ、お任せするよ。朝見ちゃんのルポはいつも面白いしね。読者も結構、期待してるんだよ。いいよ、朝見ちゃんの行きたいところへ行ってきても」
「ありがとうございます。ちょっとルポの計画を立てて、早めに行ってきます」

 翌々日、朝早く出発した。
　東京から東名・豊田インターまで約四時間だ。