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　地元議員秘書は宮本に頼まれてボートを用意したのだ。福山城で宮本が山下女史に渡したメモには、その夜、仙酔島の仙人ヶ丘展望台で待つように指示されていた。
　夕日を眺めて近くのホテルに宿泊しよう、宿は手配しているから、とのことだった。
　山下は福山城から鞆の浦へと向かい、夕方、仙酔島へと渡った。
懐かしい仙酔島を散策し、展望台で待つ山下のところに一人の男がやって来た。
「山下さんですね、一度会ったことがありますが、わたし、Ｇ建設の孫請けをやってる市田といいます。宮本さんと川上さんから言われて、ここで待ってるんです」
「ああ、そうですか、市田さんですね。一度、会ったことありますね。私も待ってるんです。でも、遅いわね」
「そうですね、ちょっと見てきましょう。まあ、コーヒーでも飲んでいてください」
　そう言って男は睡眠薬入りのコーヒーを渡して、その場を離れた。
　そして、睡眠薬が効くまで遠くから監視するのだった。 

しばらくして帰ってきた男が言うのだった。

「宮本さんは対岸で待ってるようです。わたしはボートで来てるんですよ。一緒にボートに乗りませんか？」
「いいわね、でも、変ね。なんか眠いわ」
　ぼんやり歩く山下を市田はボートに押し込むのだった。
「やあ、あそこが五色岩ですよ。夕日もいいですね」
　やがて山下はすっかり眠り込んでしまった。
　市田は山下から携帯電話やその他の資料を奪って、すっかり眠りこんだ山下を男は五色岩に突き落とした。
　夕暮れだ。誰もいなかった。
　これが仙酔島での事故の全貌だった。