そこへ二人連れの男がやって来た。
「何かあったんですか。あ、私は読日新聞のものです。話を聞かせてもらえますか」
　出した名刺には読日新聞・社会部　島崎幸雄とあった。
「え、マスコミの方？　えらい早いですね。まだなんにも発表してないのに」
「いや、丁度、通りかかったんですよ。何か事件でもあったのかなって思ったんです」
　そして担架に乗せられた女性の顔を見てびっくりした。
「あ、この女性、昨日の女だ。なんで、こんなところで」
　その言葉を聞き取った警察官が言った。
「あれ、知ってるんですか？」
「ええ、詳しいことは知りませんが、昨日、福山城で見かけた女性ですよ」
「わかりました。ちょっと事情を聞かせてください。第一発見者の方も一緒に」 

　福山西警察は国民宿舎の一室を借りて、四人から事情を聴くのだった。
　悪丸君たちは単なる発見者だ。特に話すこともない。朝の散歩の途中で沈んでいるのを発見しただけだ。
　島崎は、議員秘書を追ってきたことは黙っていた。単に取材のために福山に来て、今日は少し仙酔島を見学して東京に戻るためだった説明した。
　本当はこの女性が何か関係があると思っていて、追ってきたのだが。
　警察は一応事情を聴いて四人を解放した。
「事情聴取に協力いただき、ありがとうございます。これで、終了です。身元はこれから警察で調べます。ご苦労様でした」
「身元がわかったら教えてもらえませんか。福山西署ですね。時々、支局の人間をうかがわせますからよろしく」
　これで仙酔島の一件は終了した。