翌々日、身辺整理してから、山下はＲ工業へ行った。
「川上社長、山下です。Ｇ建設から言われました。今後は川上社長にお世話になれと。今後ともよろしくお願いします」
「おお、よく来たな。待ってたよ。明日から勤務してもらおう。経理とともに俺の秘書の仕事もやってもらうつもりだ。
　ところで君の故郷は福山だったな。実は明後日、俺は議員秘書の宮本さんと、福山へ行って、地元の秘書と会うんだ。そこで君を紹介したいだから、君も来てくれ。
　君も一度、故郷へ帰るのもいいだろう。明後日、お昼ごろ、福山城で会おう。いいね」
「わかりました。これが最初の仕事ですね。わかりました。お昼過ぎ、城の近く、福山城公園へ行きます」
　その時、ノックの音がして一人の男が入ってきた。
「川上社長、お呼びでしたか？」
「おお、いいところに来た。紹介するよ。今日からうちに来ることになった山下君だ。山下君、この男は僕の仲間なんだ。市田っていうんだ。また、会うこともあるだろう。覚えておいてくれたまえ」
「山下です。よろしく」

　この日の出会いは、宮本と川上が仕組んだ悲劇の始まりだったのだった。