第四章　　仙酔島の事件

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　山下女史はＧ建設の内部で進退きわまっていた。大下の自殺の一因は自分にあるのではないかと思うのだった。
調査を依頼した読日新聞の佐藤記者からも芳しい情報が入らないのだ。
　議員秘書の調査が始まってから、Ｒ工業からのデータがもらえなくなったのだ。
　Ｇ建設としては困っていた。
　ある日、山下は直属の上司から呼ばれた。応接室に入ると、営業担当の部長が待っていた。
「君が山下君か。君のことはＲ工業の川上君から聞いている。この前、明治神宮で自殺したうちの大下君に何か言ったらしいな。まあ、彼の自殺と持っていた始末書との件はよくわからないが。君も少しばかり絡んでるようだな。おかげでうちに情報が入らなくなってしまった。君、責任を取れよ」
　こんな風に叱責されるとは思わなかった山下だった。
「そこで、君、会社にいつまでも居れるなんて考えるなよ。今日付で退社してもらう。しかし、経理で頑張ってくれた君のことだ。ちょっと考えたんだ。川上君のところが経理のわかる人間を欲しがっている。彼の会社へ移ってもらおう。川上君は知っているだろ。悪いようにはならないよ。いいね」
　反論する余裕もなく、山下は承諾したのだった。