第三章　　　津和野から岩国へ 

　札幌から帰って、このところ少し暇を持てあましていた朝見だった。
　そこへ日本紀行の黒川編集長から電話があった。
「朝見ちゃん、暇だろ。ちょっとルポへ行ってくれない？」
　まったく、いつも暇だろしか言えない黒川編集長だ。でも、まあ、実際に暇なんだから、文句はいえない。
「いいですよ。どこへ行くんですか？」
「いや、ちょっと遠いけどね。山口のＳＬ山口号なんだけどね。ちょっと行ってくれない？」
「え、ＳＬ山口号ですか？　悪いけど、散々ルポされてるじゃないですか？　いまさら、ＳＬ山口号なんて、ルポの価値ないですよ」
「いや、いや、そこが違うんだよ。いまさらＳＬに乗れなんて言わないよ。ＳＬの走る沿線の見所、ちょっと違う視点からルポしてほしいんだよ」
「ああ、そうですか？　ちょっと面白いかな。いいですよ。じゃ、明日、お伺いします」
　それから朝見は少し計画を立てた。
　まず、新幹線で、夕方、新山口へ。そこで一泊。翌日、そこから山口市内を少し散策して、長門市へ行き、長門峡を覗き、津和野へ出る。津和野をじっくり散策してから、岩国まで出てそこで一泊。
　翌日錦帯橋を散策して東京へ帰る。という計画を立てた。
「編集長、こんな行程でどうですか。良ければ明日にでも出発しますが」
「うん、いいよ。どうせレンタカーだろ。宿は安い所にしてよ」
あいかあらずケチな編集長だな。