２　風を追って 

　政界に一陣の風が吹いていた。まだ、微風だが、いつ大きな風になることやら。
　風を感じた読日新聞の政治部記者は、一国会議員の身辺を洗うのだった。
　集めた政治資金に疑惑があるのだ。政治資金の収支報告書に掲載されていない資金が多々あるようだ。
この国会議員は中国地方選出の国会議員だった。国会議員本人かその秘書が不正な政治資金を集めているようなのだ。
　どうやら、秘書が主役らしい。でも、秘書の行動には議員は責任を負うのだ。
　政治部記者は秘書の疑惑を追った。
しかし、面識があるので秘書はなかなか尻尾を掴ませない。
　やっと秘書の行動を掴んだ政治部記者は苦悩するのだった。
どうやら、選挙区へ行くようだ。そこで現地の秘書に会うのだろう。
　どうしよう。自分の顔は知られている。あとをつければすぐに気づかれて用心するだろう。
　考えた挙句、旧知の社会部の島崎記者に相談するのだった。
「島崎さん、お願いがあるんですが。今、私が疑惑を追っているある代議士の秘書が、地元の福山へ行くらしいんです。そこで地元の秘書と、疑惑の対象の建設会社の人間と会うようなんです。わたしは面識があるんで、直接には行きにくいんです。代わりに様子をさぐって来てもらえませんか？」
「ああ、そうなの。いいですよ。できるだけ探って来ましょう。ちょうど学芸部からうちに移ってきた池田と一緒に行きましょう。その相手の資料を見せてください」