夏休みのある日、高田は郷里の鳥羽へ帰省していた。
母親の遺産の件で少し用事があったのだ。それと親戚の夫婦から、そろそろ身を固めてはどうかとの話もあった。もう一つ、重要で楽しみなこともあるのだ。
　小学校の同窓会が企画されていた。
もう、何十年になるのか、子どもの頃の仲間と会えるのだ。
　親戚からは身をかためて、鳥羽へ戻ってきてｒはどうかという話もある。
どうしよう。考えあぐねた高田だった。

　帰省した日は実家に一人で泊まる。
　さびしいなあ。
　ここまで自分のことを心配してくれる親戚がいるだけ、自分は幸せなんだろう。
　そう感じた高田だった。

　翌日、小学校の同窓会に出席した。懐かしい顔ぶれ。誰が誰か判然しないのも多々いる。でも、すぐに思いだすのだ。楽しかった。未だ独身の女の子もいる。その一人、バレエ教室のインストラクターをしている女の子と意気投合した高田だった。

　久しぶりに心が楽しく、浮き浮きしてきた。午後は、その子と鳥羽の真珠島を散策するのだった。バレエ教室も見学した。素晴らしい子だった。むかし、こんなにきれいでスタイルのいい子だっかな。すっかり意気投合した二人だった。
　そして、高田は、鳥羽へ戻ることを決意したのだった。
　詐欺グループの件は決着した。
もう、忘れよう。東京から鳥羽へ戻ろう、そう決意した高田だった。