高田が鳥羽に帰省していたあいだ、井田は計画を練っていた。丸井企画へ入り浸り、丸井社長と相談するのだった。
「どうも、われわれのことは高田には判っているようだな。このままにしておくと、そのうち、警察が介入してくるだろう。それは避けたいな。これまで、うまく行っていたんだから」
「そうですね。詐欺の対象として、高田を選んだのが間違いだったようです。受け子が捕まるとは思っていなかったんで」
「うん、どうしよう。でも、あまり過激なことはしたくないな。これ以上、手を出さないように嚇しつけるか。よし、あとはおれにまかせとけ」

　三日ほどして、丸井が井田を呼んだ。
「井田、考えてみたんだが、高田を痛めつけよう。場所は遠い方がいい。高田の故郷の三重県がいいな。君も三重県の出身だったな。いい場所を知らないか」
「そうですね、あまり人通りの少ない所ですね。そうだ、鳥羽から伊勢へ行く道に朝熊山っていうところがあるんですよ。そこならいいんじゃないかな。ここなら高田も乗ってくると思います」
「よし、わかった。じゃ、そうしよう。段取りは俺がつけるよ。いつ実行するかは考えよう。こちらは車で行こう。君も一緒に来てくれ」
「わかりました。いきます」

　井田を抹殺しようという丸井の気持も知らずに話に乗った井田だった。
　しかし、二人ともすでに池袋署の内偵が進んでいることを夢にも思わなかった。知っていれば、彼らの行動も少しは変わっただろうが。