第三章　　　日本武尊を追って 

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　アンコールワットから帰った朝見は、旅のルポを書くのに勤しんでいた。やっとのことで書き終わり、黒川編集長のところへ行くのだった。
「やあ、朝見ちゃん、ルポの原稿はどうだね。しあがったかね」
「これです、編集長、苦労しましたよ。まあ、読んでみてください」
　ざっと目を通した黒川編集長が言った。
「ああ、よくできてるね。うん、これはいいな。よし、来月号に掲載しよう。Ｈトラベルの大川社長へは、僕から渡しておくよ。かれもきっと喜んでくれるよ。また、何か言って来るかもよ」「え、でも海外のルポって結構疲れるんですよ。やっぱり、国内がいいですね。ところで、編集長、編集長は三重県っていったら、何を思い出します？」
「え、三重県？　三重県っていえば鳥羽の真珠と伊勢神宮だね。それしか思い浮かばないよ。それがどうしたんだい」
「じゃ、編集長は、伊勢神宮に参拝する作法って知ってます？　それから、三重県ってなんで三重っていうか知ってますか？」
「いや、知らないな。そう言えば、三重ってなんで三重なのかなんて考えたこともないよ。それに、伊勢神宮に参拝するルールなんて何だい」
「でしょう、『お伊勢参らば朝熊をかけよ、朝熊かけねば片参り』と伊勢音頭に唄われていたそうですよ。僕も知らなかったんだけど。朝熊ってのはあまり知りませんけどね。
　それと三重ってのはあの日本武尊の故事にちなんでるんだそうですよ。面白いでしょう」
「へえ、そうなの。面白そうだな。朝見ちゃん、よく調べたね。一度詳しくルポしてきてよ。雑誌に乗せたら、きっと読者にうけるだろう」
「そうですか、じゃ、近い内に行ってきます」