鳥羽署の土田部長刑事が
「鳥羽市内も当たったんですが、どうも、高田さんのお母さんのところへ、真直ぐやって来て、あちこちうろついた形跡はないんですよ。どうも、土地勘があったのか、詳しい情報を持っていたか、そんな状況なんですよ」
　堀越警部が補足した。
「東京での詐欺でも、迷わずに被害者宅へ真直ぐやって来てるんです。よっぽど情報を入手してるみたいです」
「そうですか、でも、この写真には見覚えがありません。ただ、この前、朝見さんと言う探偵みたいなことをしている人と話したんですが、私のこと、遠い実家の母の状況等をよく知っているってことは、きっと、身近に関係者がいるんじゃないかって言ってました。わたしもそう思います」
「え、朝見さん、あの朝見さんですか。わたしもよく知ってます。彼の言うことなら、まあ、信用できますね。そうですか、朝見さんがね。その時の状況を教えてくれませんか」
　そして、高田は母の供養のために訪れたアンコール・ワットでのことを話したのだった。 

「そうですか、あの朝見さんなら、頼りがいがありますね。彼のことは私もよく知ってます。頼り甲斐のある人ですね。まあ。この写真に見覚えがないのなら、とりあえず今日はこれくらいにしておきましょう。何か思い出したら連絡ください。お願いします。
それから、被害者の身辺はわれわれとしても気になります。皆さまにお願いしていることですが、何も起きないとは思いますが、高田さんの身辺は警察としても常時確認します。東京から離れる時は連絡ください。」

　こうしてとりあえずの事情聴取は終わったのだった。