そんなある日、高田のところに池袋署から電話があった。

「もしもし、池袋署の堀越と言いますが、高田さんでしょうか？　三重県の鳥羽署から連絡がありまして、以前、鳥羽でオレオレ詐欺にあった高田さんのお母さんの件で、お話をお聞きしたいんですが。ご都合はいかがでしょう。よければ、夕方にでもお伺いしますが」
「え、母の件ですか！　わかりました。でも、学校では少し都合が悪いですね。わたし、今日は早く帰れますので、夕方五時ごろ、池袋署へ、伺いますよ」
「ありがとうございます。じゃ、捜査課の堀越を訪ねてきてください。お願いします」 

　夕方、池袋署へ堀越警部を訪ねた高田だった。

　そこでは池袋署の堀越警部と部下の長谷川部長刑事と鳥羽署の捜査員が待っていた。
「やあ、高田さん、よくおいでくださいました。こちらは三重県・鳥羽署の土田部長刑事です。じつは、この前ニュースでご存じでしょうが、近くで、オレオレ詐欺の受け子が逮捕されましてね。取調べの結果、池袋だけじゃなく、鳥羽の高田さんのお母上の事件でも受け子としてやってましてね。かれが、受け子として行ってきた事件の関係者にお話を伺っているところなんです。それで、今日は鳥羽署からも来ていただきました。
どうです、この男に何か心当たりはありませんか」

　そう言って一枚の写真を示した。
　若い男だった。
「えーと、この男が受け子ですか。うーん、ちょっと記憶がないですね」