朝見充彦事件簿(7)
白鳥が飛び立つ

                 

 (27 )

 でも、いやしくも教師だぜ。昔と違って今の教師のモラルはだいぶん落ちてはいるが、そんなことが考えられない。考えたくない。
 ふっと気がついた。

 そうか、あの男だ。高田の住んでいるマンションの近くのワンルーム・マンションに住んでいて、時々飲みに行っている井田健司か。
 彼も三重県の出身なんだ。それで仲良くなったのだった。
 毎朝の出勤時によく顔を合わせるよ。
 彼は池袋にある小さな商社に勤めている。出勤時に時々顔を合わすのだ。ある時、近くのスナックで顔をあわせ、同じ三重県出身ということで親しくなったのだった。
 この前一緒に飲んだときに、そういえば、自分のことをしゃべったかもしれないなあ。
 鳥羽に母親がいるんだ、一度は鳥羽・伊勢に遊びに来ないかって、さそったこともあったな。
 井田は少し生活に困っているとか、言ってたなあ。
 でも、最近も彼には変わった節はないな。突き詰めるなんてことはできないよ。

 どうしようと考えこむ高田だった。

 続く