日本に帰ってから、しばらくホストとして新宿で活動していた。そのうちにまた、あちこち行きたいなあという心が騒ぎだした。その時、九州へのツアーを見つけた。お、面白そうだよ。別府もいいが、長崎に興味があった。中の島ブルースや思案橋ブルースをよく歌っていた。その現地を見るのが第一の目的だ。
　どんなところか行ってみたかった。
　九州へはホストで知り合った客の女を連れ出したのだった。
　楽しい旅だった。
　しかし、まさか、添乗員の女性がティオマン島でのツアーの添乗員だったとは！
　思案橋のところで思い出されるとは!
　その時、添乗員の女性から、ティオマン島で会ったことをいわれたのだ。
これは大変だ。自分の悪事がばれてしまう。
　その場は誤魔化して東京に戻った加藤は。どうしようかと悩んだ。いずれ、ティオマンのことが、あの添乗員からばれてしまう。
　東京へ戻ってしばらく考えて、九州ツアーの資料を調べた。
主催の旅行者はＨトラベル、添乗員は石田恵子と分かった。
　そしてＨトラベルに連絡して添乗員の石田を呼びだしたのだ。
「もしもし、石田さん、私、この前九州ツアーで一緒だった加藤です。ご相談したいことがあるので、一度お会いしたいんですが｣
　こうして加藤は池袋駅へ呼びだした。訝りながらやって来た石田だった。
　そこで、無理やり車に乗せ、埼玉県側から東京側へ渡って、車の中で乱暴し、意識を失った石田を荒川へ沈めたのだった。
　これが加藤の自供の要旨だった。